NASとは、ネットワーク上に構築された記憶装置のことです。この記事では、NASのデータ復旧が必要となる主な症状や対処法、個人でできるNASのデータ復旧方法などについて解説します。個人で解決できないときのNASのデータ復旧方法やデータ復旧業者を選ぶ際のポイントについても解説しているので、NASのデータを復旧させたい人は、参考にしてください。
目次
NASとは?
NASは、ネットワーク上に構築されたHDDやSSDなどの記憶装置です。Network Attached Storage(ネットワークアタッチトストレージ)の略称で、頭文字をとり、NASと呼ばれています。一般的に小規模オフィスや家庭に向けて設計されていて、容量や拡張性に優れている点が特徴です。
NASは、企業や学校だけでなく、家庭や個人でも広く利用されており、パソコンのデータ共有やバックアップなど、さまざまな用途で活用されています。
NASを導入するメリット
NASを導入するメリットは、主に3つあります。
- ・複数の端末でデータ共有できる
- ・外部からデータにアクセスできる
- ・さまざまな端末からアクセスできる
ここでは、3つのメリットを解説します。
複数の端末でデータ共有できる
NASを導入すれば、複数の端末でデータを共有できるようになります。NAS上の保存場所を受け手に伝えるだけでデータを共有できるため、データをメールで送ったり、資料を印刷したりする手間を省けます。そのため、業務効率化はもちろん、ペーパーレス化にもつなげられるでしょう。
NASは、HDDを簡単に増設できる設計となっているため、容量の面でもメリットがあります。接続するパソコンが増えたり、空き容量が不足したりしても、安心して利用できます。また、多拠点オフィスや社内ネットワークへの接続が容易であるため、本社との連携や部署ごとにNASを使い分けるなど、応用の幅も広がっています。
外部からデータにアクセスできる
NASで記憶装置をネットワークに接続すれば、外部からデータにアクセスできます。そのため、外出先からもデータを確認したり、保存したりすることも可能です。外出する際に、大量のデータを持ち歩く必要がないため、仮にパソコンを紛失したとしても、セキュリティの観点からも安心感を得られるでしょう。
ただし、外部からのアクセス設定を誤ると、情報漏えいする恐れもあるため、注意する必要があります。
さまざまな端末からアクセスできる
さまざまな端末からアクセスできる点も、NASを導入するメリットといえます。パソコンをはじめ、タブレットやスマートフォンからもNASにアクセスできます。スマートフォンからデータを移動させたり、バックアップしたりすることも可能です。
また、家庭で利用する際には、テレビで録画した番組をパソコンで視聴できるという便利な使い方もあります。NASを活用することで、扱える端末や機器が増加し、データを有効に活用する幅が広がるでしょう。
NASを導入するデメリット
NASを導入するデメリットは、主に2つあります。
- ・ネットワーク設定に関する知識が必要
- ・ハードディスク(HDD)破損でデータ消失の恐れがある
ここでは、2つのデメリットを解説します。
ネットワーク設定に関する知識が必要
NASを導入する際には、ネットワーク設定に関する知識が必要となります。NASを使用するときには、自身のネットワークにNASをつなげる必要があるためです。また、NASを用いて、ファイルを共有する際にも、設定が必要です。ファイルがどこに保存されているのか、ユーザのアクセス権はどうするのかなどを事前に決めて、設定しましょう。
NASに搭載されたOSによっては、ファイルを開封できない可能性もあるため、事前に確認しておくべきです。
ハードディスク(HDD)破損でデータ消失の恐れがある
NASの導入後、HDDそのものが破損すると、共有している全データが消えてしまう可能性があります。データ消失を避けるためには、RAID機能を活用することをおすすめします。RAID機能とは、データを複数のHDDに保存する機能のことです。RAID機能には、以下のように多くのモードがあります。
- ・RAID 0(ストライピング)
- ・RAID 1(ミラーリング)
- ・RAID 5
- ・RAID 6
冗長性や容量などの特徴は、それぞれ異なるため、用途に適したものを選びましょう。
データ復旧とデータ障害、修理の違い
データ復旧とデータ障害、修理は、似て非なるものです。ここでは、それぞれの定義について解説します。
データ復旧とは
データ復旧とは、NAS・HDDなどの記録メディアに故障・トラブルが起きた際に、保存データを取り出すことです。記録メディアを直すことが目的ではなく、記録メディアから保存データを取り出すことを目的としています。
データ復旧は、個人で対応する方法のみではなく、データ復旧業者に記録メディアを渡し、調査や解析を行ったうえで、保存データを取り出す方法もあります。
データ障害とは
データ障害とは、NAS・HDDなどの記録メディアに故障・トラブルが生じたことによって、データの読み書きができなくなった状態のことです。データ障害は、人為的な操作ミスやプログラム障害が原因の「論理障害」と、機械的な故障が原因の「物理障害」の2つに分けられます。
修理とは
修理とは、機器の故障や不具合の発生などで、故障箇所の部品交換・修理作業を通して、正常に利用できる状態に戻す作業のことです。メーカーや購入店での修理は、故障や不具合が生じた機器を、元の正常な状態に復旧させることを目的としています。基本的に保存されているデータは、初期化によって消去されるため、修理を依頼する際には注意しましょう。
NASのデータ復旧が必要になる故障原因
NASのデータ復旧が必要になる故障原因は、大きく2つに分けられます。
- ・論理障害
- ・物理障害
ここでは、2つの故障原因について解説します。
論理障害
論理障害とは、HDD内部にて何らかのエラーが起こり、データの読み込みができなくなる症状のことです。NASに論理障害が生じる原因の例は、以下の通りです。
- ・データや共有ファイルを誤って削除した
- ・新しいNASを設置した後、古いNASに誤ってデータを上書きしてしまった
- ・誤って初期化してしまった
- ・NASを起動しているなか、ケーブルを抜いてしまった
- ・ファイルのインデックス情報が見られなくなってしまった
- ・ウイルスに感染し、プログラムが破壊されてしまった
- ・落雷などによる停電
物理障害
物理障害とは、記録メディアが物理的に故障、破損したことによって起こる障害のことです。NASの物理障害が生じる原因の例は、以下の通りです。
- ・NAS本体やHDD、SSDの故障
- ・内部部品や基板の破損や故障
- ・停電、落雷、経年劣化、静電気による影響
- ・転倒や振動、NASを動かしたことによる衝撃
- ・NAS起動中にケーブルを抜いてしまった
- ・NASに異なるケーブルを誤って挿入した
- ・メンテナンスなどによる再起動
上記のような状態である場合、電源の入り切りや再起動などを安易に行うと、取り返しのつかない状況になる可能性があるため、注意が必要です。
寿命
論理障害、物理障害以外にも、内部パーツの経年劣化により、故障することもあります。HDDの寿命は、3〜5年程度とされており、使い方や機材によっては5年以上保つ場合もあります。
ただし、使用量やデータ量が極端に多い場合、突然故障する可能性もあるため、使用中に本体から異臭や異音がする、熱を持っているなどの症状がある場合は、早急に対処するようにしましょう。また場合によっては、初期不良で、購入後すぐにデータが見られなかったり、読み込めなかったりするなどの問題が生じるケースもあります。
NASのデータ復旧が必要となる主な症状
NASのデータ復旧が必要となる症状は、NASが起動しない、接続できない、共有フォルダへ
アクセスできないなどさまざまです。ここでは、主な症状について解説します。
NASが起動しない、電源が入らない
NASが起動しない、電源が入らない場合、データ復旧が必要となります。HDD・SSDが物理的に破損、NASやサーバーの筐体で接続ケーブルに不具合が生じた場合、起こる症状です。再起動を繰り返すと、余計に状態が悪くなる可能性があるため、注意しましょう。
また、ACアダプターの交換を試す場合、正しい定格のタイプを使う必要があるため、気をつけなければなりません。そのため、あまり詳しくない場合は、安易に試さず、データ復旧業者へ相談するようにしましょう。
NASに接続できない
NASに接続できない状態も、NASのデータ復旧が必要となる症状の1つです。ネットワークを介してNASに接続できないときは、HDDやSSDなどに異常が発生している可能性があります。通電し続けたり、電源の入り切りや再起動を繰り返したりすると、状態が悪化する可能性があるため、避けましょう。
また、NASのOSのアップデートエラーが発生することで、NASの設定画面に接続できなくなるケースもあります。
共有フォルダにアクセスできない
NASの起動はできるものの、共有フォルダにアクセスできない場合も、データ復旧作業が必要です。NASの共有フォルダにアクセスできない場合、HDDやSSDに論理障害や物理障害は発生している、ファイルやデータの破損が起きていると考えられます。
また、他の状態と同様に、通電や電源の入り切り、再起動を実施すると、データの復旧が難しくなる恐れがあるため、避けましょう。まずは電源を切り、状態を悪化させないようにしてください。
ランプが赤く点滅・点灯している
ランプが赤く点滅や点灯している状態も、NASのデータ復旧が必要となります。HDDやSSDが物理的に故障している、RAID崩壊が起きている状態を示しているケースが多くあります。また、空き容量不足や異物混入、ネットワークエラー、マウント失敗など、筐体や通信に不具合が生じている可能性も考えられます。
上記のような状態を放置していると、ランプが赤く点滅・点灯していないHDDやSSDも破壊し、NASの全データが消失する恐れがあるため、注意しましょう。
エラーメッセージ・コードが表示されている
エラーメッセージやエラーコードが表示されている場合も、データ復旧作業が必要となります。HDDやSSDが物理的に破損していたり、NASのファームウェアが故障していたり、筐体不良が起きていたりするなど、複数の原因が考えられます。
エラーメッセージやエラーコードの原因を自分で特定するのは容易ではありません。自分で対応するとリスクになる可能性もあるため、気をつけましょう。また、ESモード(スタンバイモード・復旧モード)になった場合、NASに重大な障害が起きているケースが多いため、注意が必要です。
異音が発生している
異音が発生している状態も、NASのデータ復旧が必要となる症状の1つです。NASの本体から「カタカタ」「カチカチ」などの異音が発生した場合、外部からの衝撃や経年劣化などによって、HDDに物理的な障害が発生していると考えられます。
このような状態で操作し続けると、HDDのデータ記録面に損傷が生じ、状態が悪化する可能性が高まります。そのため、異音が発生した場合、操作を控えて、安全かつ迅速に対応データ復旧業者に依頼するようにしましょう。
RAID崩壊が起きている
RAID崩壊が起きている場合も、データ復旧作業が必要となります。NASは、内蔵された複数のHDDやSSDなどを用いて、RAIDを構築しているため、RAIDが崩壊してしまう場合があります。RAIDとは、複数のストレージをまとめて1つのドライブと認識させる技術のことです。
RAID崩壊が起きると、データの読み込みができなくなったり、アクセスができなくなったりするなど、トラブルが発生します。RAID崩壊が起きた際には、データが消失する危険な状態であるケースが多いため、データを安全に取り出したい場合は、データ復旧業者に依頼しましょう。
通信速度が遅くなっている
通信速度が遅くなっている状態も、NASのデータ復旧が必要となる症状の1つです。通信速度が遅くなったときは、HDDやSSDに物理障害が起きているか、ネットワークに障害が生じている可能性があります。
まずは、ルーターやモデムの接続状況について確認してください。そのうえで、HDDやSSDが正常に動作しているか否かを確認しましょう。それでも問題が解消されない場合は、データの必要有無に応じて、データ復旧業者に依頼する方法をおすすめします。
NASのデータ復旧をするために実施すべき対処法
NASのデータ復旧をするために実施すべき対処法は、ケーブル類やエラーメッセージ・コードを確認するなど、さまざまです。ここでは、5つの対処法について解説します。
ケーブル類を確認する
NASのデータを復旧するためには、まずはケーブル類が接続されているか、電力供給は問題ないかを確認しましょう。ケーブルが断線していたり、差し込む場所が違ったりするなど、接続不良が原因となっている可能性が考えられるためです。
ケーブルの接続不良時は、電源ランプが普段とは違う色で点滅している、エラーメッセージやエラーコードが表示されるなど、異常が発生します。単なる接続不良であれば、ケーブルの接続を見直すだけで解決するケースが多いでしょう。
エラーメッセージ・コードを確認する
エラーメッセージやエラーコードを確認することも、NASのデータを復旧させるために大切です。メッセージやコードをもとに、NASの状態について把握ができるためです。メッセージやコードは、複数表示されるケースもあるため、見逃さないようにしましょう。
本体の液晶画面に表示されるモデルの場合、横のボタンを押すと、メッセージやコードの切り替えができます。複数ある場合は、内容をメモにとり、それぞれ対処しましょう。
バックアップ機能を確認する
NASのデータを復旧させるためには、定期的にバックアップをとる設定になっているか、バックアップ機能の設定を確認しましょう。NASを利用する際には、外付けのHDDやNASにデータをバックアップするように設定していることが多いとされています。
バックアップ機能が設定されている場合、バックアップ部分からデータを復旧できる可能性があるため、積極的に活用しましょう。
ゴミ箱機能を確認する
NASのデータを復旧させるためには、NASのゴミ箱機能が有効になっているかどうかも確認しましょう。NASの種類のなかには、ゴミ箱機能が搭載されたものもあります。ゴミ箱機能が搭載されており、設定が有効になっている場合、データを復旧できる可能性があります。
万が一誤ってデータを削除してしまったときは、ゴミ箱より紛失データを復旧させましょう。
NASを使うのをやめる
NASに不具合やトラブルが起こっている場合、NASを使うのをやめましょう。そのまま使い続けると、状態が悪化したり、データが上書きされたりするなど、二次損失が起こる可能性があるためです。また、データ復旧の難易度も上がり、最悪の場合、復旧ができなくなる恐れもあります。
故障の原因が定かではない場合、電源の入り切りや再起動、通電し続けるなどせずに、電源を切っておくと安心です。
個人でできるNASのデータ復旧方法
NASのデータ復旧は、症状次第では個人でも対応可能です。ルーター設定やネットワーク接続を確認したり、NASの再起動を実施したりするなど、さまざまな方法があります。ここでは、6つの復旧方法について解説します。
ルーター設定を確認する
NASがマウントされずデータを確認できない場合、ルーターでNASへの接続が有効になっているかを確認しましょう。ルーターにNASのアドレスが登録されていた場合、ルーターにてNASのステータスを確認できます。
また、NASのIPアドレスを確認し、ルーター設定に正しくIPアドレスが設定されているかも確認しましょう。ネットワークのファイアウォールの設定、NASのパスワードの確認も合わせて行います。
ネットワーク接続を確認する
NASが認識できないトラブルや不具合を抱えている場合、NASがネットワークに接続されているか否かを確認しましょう。ネットワーク機器指定のIPアドレスを確認した後、NASの設定を確認する流れです。ネットワーク接続設定の問題がないにも関わらず、NASが認識されない場合、NASのOSのアップデートを試してみましょう。
NASの再起動を実施する
NASが認識しないトラブルや不具合を抱えている場合、NASの再起動を実施すると問題が解決される場合があります。NASを再起動する手順は、以下の通りです。
- 1.NASの電源を切って、数分後に電源を入れる
- 2.問題が解決しない場合、NASの設定画面より「再起動」をクリックし、再起動を実行する
- 3.NASの電源を切って、数分後に再度電源を投入する
上記の流れで行うことによって、問題を解消できる可能性があります。ただし、再起動することによって、NASの設定が初期化される可能性もあるため、注意が必要です。再起動によりNASの設定が初期化されてしまった場合、設定を元に戻す作業が必要になります。
イベントログを確認する
NASが正常に認識されない場合、イベントログを確認する方法もあります。イベントログには、NASやネットワーク側で起きた問題が記録されているため、イベントログを確認することによって、問題を特定できる可能性があります。
イベントログを確認しても、問題を特定できない場合は、NASのドライバやソフトウェアをアップデートする方法を試してみてください。
バックアップから復旧させる
NASでデータを確認できない場合、バックアップからデータを復旧させる方法もあります。バックアップさえしてあれば、簡単な作業かつ低コストで、データを復旧できます。バックアップからデータを復旧させる手順は、以下の通りです。
- 1.NASにバックアップデータを転送する
- 2.NASにアクセスし、データを選択する
- 3.NASの設定を復旧させる
- 4.データを復旧させる
- 5.NASを再起動し、データ復旧完了を確認する
データ復元ソフトを活用する
データ復元ソフトを活用する方法もあります。データ復元ソフトとは、NASの内部にあるデータを調査し、消失したデータを検索できるソフトウェアのことです。ただし、多くのデータ復元ソフトは、Windowsのパソコン向けに作られており、NASの独自のODやRAID構成のサーバーでは対応不可な場合が多いため、注意が必要です。
データ復元ソフトを活用するリスク
データ復元ソフトは、個人でもデータ復旧ができる容易に手に入れられるソフトウェアである反面、リスクもあるため、使用する際には注意が必要です。
多くのデータ復元ソフトは、軽度の論理障害のみにしか対応しておらず、物理障害が起きていた際には、状態を悪化させてしまう可能性が高いとされています。そのため、安易に使用し、復元失敗や操作ミスをすると、データ復旧率を下げてしまうリスクさえあります。大切なデータを復旧させたいのであれば、安易に使用することは避けた方がよいでしょう。
個人で解決できないときのNASのデータ復旧方法
個人でデータ復旧できない場合、メーカーや購入店、データ復旧業者に相談・依頼する方法があります。ここでは、個人で解決できないときの2つの復旧方法について解説します。
メーカー・購入店に相談・依頼する
「NASに保存されているデータは諦めて、機器が動くようになればよい」と思っている人は、メーカーや購入店に相談・依頼の検討をすることをおすすめします。メーカーや購入店は、機器の修理をメインに行っており、データの保証はせずに、初期化されて消えてしまうケースが多いためです。
また、修理に時間がかかるケースも多いため、機器が戻ってくるまで待つ必要があります。そのため、早く問題を解決したいと思っている人には、適していないでしょう。
データ復旧業者に相談・依頼する
NASに保存しているデータを残したい場合は、データ復旧業者に相談する方法を検討することをおすすめします。NASに起こるトラブルや不具合は多岐に渡るため、個人で作業を進めてしまうと、逆にデータ損失のリスクが高まるでしょう。データ復旧業者に依頼すれば、原因や障害の特定ができ、正しい手順でデータを復旧させられます。
データ復旧業者を選ぶ際のポイントは、以下にて解説します。
データ復旧業者を選ぶ際のポイント
データ復旧業者を選ぶ際には、復旧実績や復旧率、自社内に復旧設備を持っているかなど、確認すべきポイントがあります。ここでは、4つのポイントについて解説します。
復旧実績・復旧率が明記されているか
データ復旧業者を選ぶ際には、復旧実績や復旧率など、過去の実績が公式サイトに掲載されているか、確認しましょう。データ復旧業者によっては、明確な数値を明記していない場合もあります。復旧実績や復旧率が記載されていても「最高レベル」「国内最高」のような曖昧な言葉で記載している場合、データ復旧業者の技術力に疑念を抱くべきです。
信頼性の高いデータ復旧業者であれば、明確で根拠のある数字を提供しています。また、他社で復旧できなかった機器の復旧実績があるデータ復旧業者も、高難易度の障害に対応する力があり、技術レベルが優れているといえるでしょう
自社内に復旧設備を持っているか
自社内にデータ復旧設備を持っているかも、データ復旧業者を選ぶ際のポイントの1つです。データ復旧業者のなかには、自社でデータ復旧をせずに外注したり、自社内に復旧設備を持たなかったりするデータ復旧業者もいます。このようなデータ復旧業者に依頼すると、誤った処理が行われ、最悪の場合、データを損失する可能性さえあります。
セキュリティに優れているか
データ復旧業者を選ぶ際には、セキュリティに優れているデータ復旧業者かどうかも、確認しましょう。特に社外秘データのような重要情報を復旧させる場合、データ復旧業者のセキュリティ対策の確認が必須です。セキュリティの判断材料として有効なのは、「ISO27001」「Pマーク」などの規格です。
ISO27001は、世界基準のセキュリティ認定の規格です。一方で、Pマークとは、企業や団体などの個人情報保護の体制・運用が適切であることを、第三者の審査期間が示す制度のことです。
納品指定ができるか
納品指定ができるかどうかも、データ復旧業者を選ぶうえで確認すべき点です。データ復旧業者によって、データ復旧依頼から復旧までのスピードが異なります。そのため、急を要する場合は、希望納期まで対応できるデータ復旧業者かどうか確認し、希望の納期までに対応可能であるデータ復旧業者を選びましょう。
また、納期によって費用が変わる可能性もあるため、希望の納期がある場合、見積もりの段階で明確に伝えることをおすすめします。
NASのデータ復旧をする際の注意点
NASのデータを復旧する際には、通電し続けない、HDDを抜き差ししないなど、注意すべき点があります。ここでは、NASのデータを復旧する際の注意点について解説します。
通電し続けない
NASのデータを復旧させる際には、通電し続けたり、電源の入り切りを繰り返さないようにしましょう。NASに不具合やトラブルが起きた際には、機器の電源を切り、状況が悪化しないようにすべきです。通電し続けるだけでも、状態が悪化する、データが上書きされるリスクが生じる可能性があります。
不具合やトラブルが発生した際には、まずケーブルを抜き、電流を遮断しましょう。
ハードディスク(HDD)を抜き差ししない
NASのデータを復旧させる際には、HDDを抜き差ししないようにしましょう。異常が発生しているHDDをNASから抜き差ししても、ファイルやフォルダなどのデータは見られません。最悪の場合、データを完全に失う可能性もあります。
また、単体でパソコンに接続した際に表示される「フォーマットしますか?」というエラーメッセージに従うと、情報の上書きや悪化のリスクが高まります。
リビルド(再構築)をしない
NASのデータを復旧させるときには、リビルドをしないようにしましょう。リビルドとは、故障したディスクからデータを復元、再構築し直す作業のことです。リビルドを実施している最中に、別の障害が起きた場合、対象のドライブやデータのみではなく、全てのドライブが破損する恐れがあります。
リビルドを実施することで、ディスクの状態を悪化させるリスクや、リビルド自体が不成功に終わる可能性の方が高くなるケースがよくあります。実際にリビルドを行うことで、取り返しのつかない状況に陥るケースも稀ではありません。
分解・修理作業を自分で進めない
NASのデータを復旧させる際には、分解や修理作業を自分で進めないようにしましょう。故障原因が曖昧なまま、自分で復旧作業を進めると、より悪化させる恐れがあるためです。分解して修理・復旧をするために必要なスキルや環境は、以下の通りです。
- ・高度な技術力
- ・深い専門知識
- ・互換性のある部品を調達する力
- ・クリーンルームのような専用の環境
上記のようなスキルや環境がない場合、分解や処理作業を自分で進めずに、データ復旧業者へ依頼するようにしましょう。
内蔵HDDの交換・順番入れ替えはしない
NASのデータを復旧させるときには、内蔵HDDの交換や順番の入れ替えをしてはいけません。NASに内蔵されているHDDは、複数のディスクにてRAIDを構築しているので、交換・順番入れ替えをすると保存データの規則性が乱れてしまいます。
また、電源の入り切りや再起動の繰り返し、通電し続けると状態が急速に悪化する可能性があるため、NASの電源を切り、データ復旧業者に依頼することをおすすめします。
ファームウェアのアップデートはしない
NASのデータを復旧させる際には、ファームウェアのアップデートをしないようにしましょう。ファームウェアのアップデートをしても、問題が解決できることは少ないとされています。安易にアップデートしたがために、データを上書きしてしまったり、データを初期化したりする恐れがあるため、控えるべきです。
NASが起動しないか、エラーが発生してファームウェアのアップデートが求められる場合、機器の電源を切り、プロのデータ復旧業者に相談することが適切です。操作や作業を安易に進めると、復旧の難易度が上がり、逆に復旧が難しくなる可能性があります。慎重な対応が重要です。
弊社の復旧事例
復旧事例を2つ紹介します。まずは、CTIの画像ファイルを復旧させた医療機関の事例です。HDD4台中2台が故障していた状態から、データ復旧しました。調査期間は14日間で、復旧期間は4日間です。
続いて、データ一式を復旧させた自動車製造業者の事例を紹介します。DISKの5番目が初めに異常ランプが点灯し、その後DISKの0番と2番が故障しました。この際、データ一式(ワード、エクセル、パワーポイント、CADデータなど)が影響を受けました。
他のデータ復旧業者ではおおよその見積もりが約1,000万円とされましたが、AOSデータ復旧サービスセンターでは、わずか195万円で無事にデータの復旧が成功しました。調査期間は9日間で、復旧期間は5日間です。
まとめ
NASは、Network Attached Storage(ネットワークアタッチトストレージ)の略称で、ネットワーク上に構築されたHDDやSSDなどの記憶装置のことです。NASにトラブルや不具合が生じた際には、まずは症状を確認し、症状に合わせた対処をしましょう。自分で問題を解決できない場合は、メーカー・購入店や、データ復旧業者に相談・依頼することをおすすめします。
弊社は、スクラッチ・メモリ復旧技術において高い技術力を有し、HDDの傷の復旧やUSBメモリの復旧などに対応できるサービスを提供しています。メーカーとの業務提携を行っており、専門のコンサルタントが電話やメールで丁寧にサポートします。NASのデータ復旧でお悩みの人は、ぜひご相談ください。
執筆者
小菅 大樹(Kosuga Daiki)
■執筆者情報
・会社名:AOSデータ株式会社
・部署名:データ復旧事業部
・略歴:2015年に入社。物理障害復旧部門の立ち上げを行い、HDD・SSD・Flash Mediaの内製化を行った。自身でも1万台以上の物理障害の復旧を成功させている。
・保有特許:特開2017-188178(https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6450702)
・過去の講演:車載組込みシステムフォーラム(ASIF)様にて、「ストレージの物理障害対応と車載機器へのデジタルフォレンジックの活用例」をテーマに講演。(https://www.as-if.jp/skillup-seminar-2021-3.html)
・所属団体:NPO データ復旧技術研究会
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