SDカードに水がかかる、洗濯してしまうなどのトラブルが発生したとき、適切な対処ができればSDカードの故障を防ぐことが可能です。この記事では、うっかりSDカードを水没させてしまった人に向けて、被害を最小限に抑えるための対処法を解説します。
目次
SDカードの構成
SDカードは、SDメモリーカードとも呼ばれるフラッシュメモリの1つです。構造はシンプルで、SDカードコントローラとフラッシュメモリそれぞれを制御する回路基盤で構成されています。サイズが小さく持ち運びがしやすく、パソコンをはじめ、デジタルカメラや携帯ゲーム機の記憶媒体としても活用されています。
SDカードの「水没」とは
SDカードの水没とは、SDカードを直接濡らしてしまうことです。具体的には、水のなかに落としてしまった、水がかかった、雨に濡れた、ポケットに入れたまま洗濯したなどが水没に該当します。水没すると、SDカード内のICチップや回路がショートする可能性があります。
また、直接濡らさなくても、SDカードが水没するケースは少なくありません。スマートフォンやデジタルカメラなどの機器をSDカードを差し込んだまま水没させてしまった場合も、SDカードは水没します。
SDカードの水没によって発生するトラブル
SDカードが水没することによって、どのようなトラブルが発生するのか解説します。
SDカードを認識しない・読み込まない
SDカードを認識しない、または読み込まないのは、水没したSDカードに発生しがちなトラブルです。SDカードは、電気信号を処理するために微細な回路構造で構成されている精密機器です。SDカードが水没してしまうと、ICチップや回路がショートしてしまい、SDカードが本来の役割を果たせなくなってしまいます。
エラーメッセージが出る
SDカードが水没すると、SDカードを差し込んだ機器にエラーメッセージが表示される場合があります。エラーメッセージは「カードが破損しています」「このSDカードは使えません」「フォーマットしますか?」などです。画像や動画のサムネイルが表示されても、実際に開くと「写真がありません」と表示される場合もあります。
やってはいけない!SDカードが水没したときのNG対応
SDカードが水没したとき、状況を悪化させる可能性が高い、やってはいけないNG対応を解説します
機器に接続して何度も抜き差しする
認識しないからといって、何度も機器にSDカードを抜き差しすることはNGです。SDカードに電気的な負荷をかけ続けると、保存データが消えたり、破損したりする場合があります。SDカードを1度抜き差しして事態が好転しなければ、自力での作業は控え、専門家の力を借りましょう。
SDカードを分解する
水没したSDカードを自分で分解することは、絶対にやめてください。SDカードを分解しても基盤またはモノリスと呼ばれているパッケージ化された板が見えるだけでできることはありません。またケースが破損するためSDスロットに差し込めなくなります。分解しても改善することは決してありませんので、やらないようにしましょう。
通電を続ける・再起動をする
通電を続けたり再起動したりすることも、やってはいけないNG対応です。通電を続けると、SDカードに負荷がかかってしまい、症状が悪化するリスクが高まります。データを読み込まないからといって、再起動をすることも同様です。SDカードの異常を感じたら、機器からすぐ取り外しましょう。
フォーマットを実行する
SDカードが水没した場合、フォーマットを実行することもやめてください。SDカードを正常に読み込めない場合、「ドライブを使うにはフォーマットする必要があります」「フォーマットしますか?」などのフォーマット要求のエラーメッセージが表示されることがあります。
フォーマットを実行した場合、データを全消去して初期化することになるため、症状が悪化する可能性があります。フォーマットを要求されても、必ずキャンセルして実行しないでください。
データ復旧ソフトを使用する
SDカードが水没したとき、データ復旧ソフトを使用することもNG対応です。データ復旧ソフトが有効なのは、間違ってデータを削除してしまった場合をはじめとする論理障害に対してのみです。水没したSDカードにデータ復旧ソフトを使用しても意味がないどころか、症状の悪化を招く可能性が高いです。
SDカードの水没は「物理障害」に分類される
SDカードが故障した場合、障害の内容によって物理障害と論理障害の2つに分類されますが、SDカードの水没は物理障害に該当します。物理障害とは、SDカード本体が物理的な原因によって破損し、発生した障害のことです。水没のほかにも、SDカードが折れてしまった場合や、曲がってしまった場合も物理障害に該当します。
物理以外の原因でデータが破損している論理障害とは異なり、自分で復旧させることは基本的に不可能です。
水没したSDカードのデータ復旧は「データ復旧業者」へ依頼を
水没したSDカードのデータを復旧したい場合は、データ復旧業者に相談しましょう。論理障害と異なり、物理障害によって破損したSDカードのデータを復旧させることは、簡単ではありません。正しい技術と知識を有し、SDカードのデータの復旧をしてくれる業者の数も限られています。そのため、仕事を依頼する業者選定は、慎重に行う必要があります。
データ復旧業者を選ぶ5つのポイント
水没したSDカードのデータ復旧のための、データ復旧業者選びのポイントを解説します。
復旧実績を明記している
データ復旧を依頼する前に、業者の復旧実績を確認しましょう。データ復旧の実績がない業者は経験が浅い、成功事例が少ないなど、問題を抱えている可能性があります。復旧実績は、業者の公式Webサイトや口コミから調べるのがおすすめです。具体的なデータの復旧事例が公開されていれば、なお安心できます。
他社で復旧できなかったデータの復旧実績がある
業者選びの際は、他社で復旧できなかったデータの復旧実績があるか否かも確認しましょう。他社で復旧できなかったものの復旧実績があるのは、技術力が高い証です。データ復旧は、機器の種類や障害の程度、種類によって必要な技術力が異なります。業者によって技術力に差があるため、技術力が低い業者に依頼すると復旧できない可能性が高いです。
自社のラボがある
自社のラボを持っているかどうかも、データ復旧を依頼する業者を選定するポイントです。データ復旧業者のなかには、自社で作業せずに外注しているところもあります。外注している業者は技術力やセキュリティ面などにおいて、信頼度が低いです。自社ラボの有無は公式Webサイトから確認できるため、しっかり目を通しておきましょう。
セキュリティ対策が万全である
データ復旧業者へ依頼する際は、セキュリティ対策が万全か否かもチェックしましょう。SDカードによっては機密情報や個人情報など、重要なデータが記録されている場合があります。昨今は、情報漏洩に対して厳しい目が向けられるようになっています。場合によっては、訴訟や高額な損害賠償が発生する可能性も否定できません。
プライバシーマークやISO認証を受けている業者であれば、安心して作業が任せられるでしょう。
官公庁との取引がある
官公庁との取引実績が明記されているデータ復旧業者は、信頼性が高いです。官公庁が扱っているデータは機密情報が多く、細心の注意を払って扱わなければなりません。つまり、技術力のみならず、万全のセキュリティ対策も備わっていることを示しています。また、受賞歴や表彰歴も合わせて確認するようにしましょう。
データ復旧を依頼してはいけない業者の特徴
データ復旧業者の技術力はさまざまです。依頼してはいけない業者の特徴を具体的に解説します。
根拠のないデータ復旧率をアピールしている
「データ復旧率〇%の実績」のように、高い復旧率を明記してアピールしている業者は避けましょう。データ復旧率の定義は定められておらず、業者ごとに異なるため、信用度の判断材料にはなりません。日本データ復旧協会が定めているガイドラインでも、データ復旧率という用語そのものを営業活動に用いないことを推奨しています。
データ復旧率の根拠が正しく記載されているか、また月単位のよいところだけを切り取った値ではないかを確認しましょう。
参考:データ復旧サービスのガイドライン | 一般社団法人 日本データ復旧協会-DRAJ
見積り時に契約を急かされる
見積りを依頼したとき、契約を急かしてくるデータ復旧業者は避けましょう。昨今はさまざまなデータ復旧業者が登場しており、無料で見積もりをしてくれる業者も少なくありません。その際「うちでしか直せない」「今すぐ対応しないとデータが取り出せない」などといわれた場合、悪徳業者である可能性が高いです。
口コミをチェックする
サービスを実際に利用した人の口コミや評判を、オンライン上で確認しましょう。口コミから、実際に業者を利用した人たちの生の声がわかります。ただし、口コミのなかにはサクラが書いた口コミや、競合他社が書いた悪い口コミも紛れています。すべての口コミ鵜呑みにするのではなく、あくまで参考情報として利用するようにしてください。
成功報酬制ではない
仕事を依頼するにあたって、データ復旧業者の報酬形態を必ず確認してください。データ復旧の場合、データの復旧に成功したときだけ料金が発生する、成功報酬制が採用されていることが一般的です。しかし、初期診断費用をはじめ、データが取り出せるかどうか不明な時点で料金が発生する業者も少なくありません。
復旧できなかった場合も最初に支払った料金は返金されない可能性が高いため、成功報酬制以外の業者は避けた方がよいでしょう。
SDカードを水没させないための対策
SDカードを水没させないための対策を解説します。
防水性能を備えたSDカードを使う
水没防止のためには、防水性能を備えたSDカードの使用がおすすめです。SDカードのなかには、防水性能を備えたタイプがあります。防水性能はIPXという指標で、IPX0~IPX8までの9等級で示されており、数字が大きい方が防水性能に優れています。
水没が心配な場合は、防水性能を備えたものか購入時に確認しましょう。ただし、防水性能が高くても、洗濯のように長時間の水没や圧力は損傷の可能性があるため注意してください。
SDカードをポケットに入れない
SDカードは、ポケットに入れないようにしましょう。SDカードをポケットに入れたまま忘れてしまい、そのまま洗濯して水没させてしまうケースは少なくありません。普段からポケットにものを入れる習慣がある人は、とくに注意しましょう。
普段からバックアップを取ることも大切
重要なデータは、普段からバックアップを残しておくようにしましょう。SDカードは水没だけではなく、操作ミスやほかの障害が原因でデータが取り出せなくなることもあります。また、本体が薄く小さいため、破損や紛失のリスクも低くありません。いざというときのために、定期的にバックアップをとることをおすすめします。
SDカードのデータをバックアップする方法
SDカードのバックアップについて、パソコンを使用する方法と、クラウドストレージを使用する方法を解説します。
パソコンにバックアップする
SDカード内のデータをバックアップする際、HDDやSSDなどパソコンのストレージに残す方法があります。パソコンのストレージを利用する場合、手動でバックアップを残す方法や、専用ソフトを利用する方法が一般的です。インターネットに接続されていないオフライン環境でも、バックアップ作業ができる点がメリットです。
パソコンにバックアップする方法
パソコンにバックアップを残す基本的な手順は、以下の通りです。
- ・パソコンに直接SDカードを差し込む
- ・タスクバーの「エクスプローラー」から「PC」を選択する
- ・接続したSDカードを開いて、すべてのデータを選択する
- ・選択したデータを右クリックし、一覧から「コピー」をクリックする
以上の操作で、SDカードのデータをパソコンに丸ごとコピーすることが可能です。メモリスロットがないパソコンの場合は、カードリーダーを使用しましょう。スマートフォンで使用しているSDカードなら、スマートフォンをパソコンに接続しコピーアンドペーストをしてください。
また、最近ではバックアップを残すための専用ソフトも登場しているため、必要に応じて活用するのもおすすめです。パソコンの機種によって手順の詳細が異なるケースがあるため、気になる人は公式サイトを確認しましょう。
クラウドストレージにバックアップする
クラウドストレージとは、オンライン上の仮想空間にデータを保存できるサービスのことです。Googleドライブをはじめ、iCloudやOneDrive、Dropboxなどがよく知られています。容量に上限はありますが、アカウントを登録すれば無料で利用可能です。
インターネットに繋がれば、どこからでもアクセスできる点がメリットです。逆に、インターネット環境がなければ利用できないことが欠点といえます。
クラウドストレージにバックアップする方法
クラウドサービスのバックアップを残す方法ですが、Googleドライブの場合は以下のとおりです。
- ・ドライブを開く
- ・右下の「+」から「アップロード」を選択する
- ・バックアップしたいデータにチェックを付け「選択」をクリックする
- ・「設定」を開き「システム」を選択する
- ・「バックアップ」を選ぶ
自分が主に使っているサービスをはじめ、日常的に使っているアカウントがあれば、問題なく管理できるでしょう。
まとめ
SDカードが水没すると、データの読み取りができなくなるほか、さまざまなトラブルが発生する原因となります。そのため、普段から水没させないように対策を徹底する、水没したときに備えてバックアップを残すなどしましょう。
もし水没したSDカードからデータを取り出したい場合は、データ復旧業者の力を借りるのがおすすめです。AOSデータ復旧サービスセンターは、確かなスクラッチ、およびメモリ復旧技術を用いた作業で、クライアントから高い評価を受けています。
メーカーとの業務提携も結んでおり、他社では不可能だったデータの復旧にも多数成功しています。コンサルタントによる丁寧なフォローも電話、メールで受けられるため、興味を持った人はぜひお問い合わせください。
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執筆者
小菅 大樹(Kosuga Daiki)
■執筆者情報
・会社名:AOSデータ株式会社
・部署名:データ復旧事業部
・略歴:2015年に入社。物理障害復旧部門の立ち上げを行い、HDD・SSD・Flash Mediaの内製化を行った。自身でも1万台以上の物理障害の復旧を成功させている。
・保有特許:特開2017-188178(https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6450702)
・過去の講演:車載組込みシステムフォーラム(ASIF)様にて、「ストレージの物理障害対応と車載機器へのデジタルフォレンジックの活用例」をテーマに講演。(https://www.as-if.jp/skillup-seminar-2021-3.html)
・所属団体:NPO データ復旧技術研究会
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