サーバーのデータは、論理障害や物理障害で失われることがあります。失われたデータを復旧する方法は、ファイル履歴やバックアップから復活させる、データ復旧会社に依頼するなどです。この記事では、データが失われる原因や復旧手順、注意点などを解説します。データ復旧会社の選び方も解説するので、参考にしてください。
目次
サーバーから削除されたデータも復元できる可能性がある
サーバーに保存されているデータは、復元できる可能性があります。ただし、適切な方法で復元しなければ、データが失われかねません。なお、失われたデータもデータ復旧会社に依頼すれば、復旧できる場合があります。
サーバーにアクセスできない原因
サーバーにアクセスできない原因を、3つに分けて解説します。
論理障害
論理障害とは、ヒューマンエラーや、プログラム上の問題発生などによって生じる障害のことです。内的要因が多く、ストレージ(HDD/SSD)に物理的な破損はありません。しかし、データやファイルは破損している状態です。
論理障害で起きる症状
論理障害では、以下のような症状が発生します。
- ・「ディスクがフォーマットされていない」「フォーマットする必要があります」というエラーメッセージが表示される
- ・OSが起動できない
- ・管理画面でフォーマットや初期化を要求される
- ・何度もフリーズする
- ・管理パソコンにエラーメッセージが表示される
- ・ファイルやフォルダが開けない、コピーできない、削除されている
- ・ブルースクリーンになる
論理障害が起きる原因
論理障害が発生する原因には、以下のものが挙げられます。
- ・必要なフォルダやファイルを誤って削除した
- ・ゴミ箱を空にした
- ・データを上書き保存した
- ・外付けHDD(ハードディスクドライブ)や特定のディスクドライブを、誤ってフォーマット実行した
- ・作業中に停電が起こった
- ・シャットダウンせずに電源を切っった
- ・Windows Updateの途中で電源を切った
- ・作業中にケーブルが抜けた
- ・共有ファイル、共有フォルダを削除した
- ・初期化した、RAID構成の上書きした
- ・RAIDのリビルド(再構築)に失敗した
- ・RAID崩壊が生じた
- ・ウイルスに感染したことでプログラムファイルが破壊された
- ・クリーンインストールをした
物理障害
物理障害とは、機器本体や内蔵HDDやSSDが物理的・機械的に故障したり、内部部品が破損したりする障害です。経年劣化や初期不良なども含まれ、外的要因が主流です。自力での対処が難しく、データ復旧会社に依頼する必要があります。
物理障害で起きる症状
物理障害で発生する症状は以下のとおりです。
- ・カチカチ・カタカタと異音がする
- ・ファイルやフォルダが開けない
- ・リビルドに失敗する
- ・モータが回っていない
- ・焦げたにおいがする
- ・ドライブがBIOSで認識できない
- ・異音がする
- ・不良セクタが発生し、「ファイルが壊れています」とエラーメッセージが表示されたり、HDDから異音が聞こえてきたりする
物理障害が起きる原因
物理障害が発生する原因として、以下が挙げられます。
- ・経年劣化により機器が故障した
- ・内部部品の故障、基板の破損が発生した
- ・HDDのプラッタ上に傷が発生した
- ・静電気が起きた
- ・衝撃や振動を与えた
- ・水没させた
- ・停電や瞬電が起きた
- ・自然災害が起きた
- ・電源周りが故障した
- ・過電圧や電力部分に問題が発生した
- ・室内が高温になり、機器本体や内蔵HDDが高温になった
サーバー機自体の故障(ハードウェア障害)
サーバー機自体の故障により、サーバーを構成するハードウェアに不具合が起こる場合があります。その結果、サーバーが起動しない、サーバーが再起動やフリーズを繰り返すなどの症状が発生しかねません。原因として、サーバーを構成するHDDやCPU、メモリ、マザーボードなどの故障などが考えられます。
サーバーは、24時間365日休みなく常に熱を帯びた状態で稼働し続けるため、内部のパーツや部品が劣化しやすい特徴があります。また、地震や水害、落雷などの自然災害により、物理的なダメージを受けたり、接続障害が生じたりする可能性も考えられるでしょう。ハードウェアの劣化、設定ミスや操作ミス、メンテナンス不備により、誤作動や故障が生じることもあります。
サーバー機エラーランプの点灯
機器によっては、サーバー機のエラーランプが点灯し、異常の発生や状態を把握できるモデルもあります。不具合が発生した際は、ランプの色と点滅状態を確認しましょう。エラーランプの例は以下のとおりです。
- ・富士通:保守ランプ(エラーランプ)がオレンジ色に点灯、点滅したままになる
- ・lenovo:サーバーの前面にある前面オペレーター・パネルでLEDが点灯したあと、障害が起こったコンポーネント上で点灯する
サーバーの不具合が起きたときに取るべき対処法
サーバーに不具合が起きたら、以下の対処法を取りましょう。
機器本体の状態を確認する
機器本体にケーブルがささっているか、電力が供給されているかなど、本体の状態を確認します。配置換えや大掃除などで、ケーブルが抜けていたり抜けかけていたりも考えられます。ケーブルが物理的に故障、劣化している場合もあるでしょう。あわせて、異音やブザー音、ビープ音が聞こえるかも確認しましょう。
エラーメッセージを確認する
エラーメッセージを確認することで、機器の状態を把握できる場合もあります。エラーメッセージは、サーバーに保存しているデータが失われる前触れです。エラーメッセージには、OSが見つからないときに出る「Operating system not found」「Operating system loader is not found」などがあります。
Windowsサーバーのデータ復旧をする手順
Windowsサーバーのデータは、以下の手順で復旧しましょう。
ファイル履歴からデータ復旧する手順
ファイル履歴からデータ復旧する手順は以下のとおりです。
- 1.「コントロールパネル」を開く
- 2.「ファイル履歴」をクリック
- 3.左側のメニューで「個人用ファイルの復元」をクリック
- 4.バックアップ済みのファイルを確認
- 5.復元したいファイルを選択、ファイル履歴の復元ボタンをクリック
バックアップ機能を有効にする手順
上記の方法は、事前にバックアップ機能を有効にしておく必要があります。有効にする手順は、以下のとおりです。
- 1.外付けのストレージを接続して、「ファイル履歴を使用してバックアップ」を選択する
- 2.「その他のオプション」「ドライブの追加」の順にクリックする
- 3.バックアップ先のドライブを指定する
- 4.「ファイルのバックアップを自動的に実行」が「オフ」になっていた場合は、「オン」に切り替える
システムの保護(Volume Shadowcopy)からデータ復旧する手順
以前のバージョンに戻すことで、削除したデータを復元できる場合もあります。以下の手順を取りましょう。
- 1.復元したいデータが入っていたフォルダを右クリックし、「以前のバージョンの復元」を選択する
- 2.「以前のバージョン」タブを開き、復元したい時点のファイルを選択する
- 3.復元したい日時のファイルを選択して、「復元」をクリックする
システムの保護機能を有効にする手順
「システムの保護(Volume Shadowcopy Service)」は、事前にシステムの保護の機能を有効にしておきましょう。手順は以下のとおりです。
- 1.「スタートボタン」を右クリックする
- 2.「システム」をクリックする
- 3.右側のメニューをスクロールする
- 4.「システムの保護」をクリックする
- 5.「システムのプロパティ」画面から「利用できるドライブ」内で保護機能を有効にしたいドライブを選ぶ
- 6.「構成」ボタンをクリックする
- 7.「システムの保護を有効にする」を選び「OK」をクリックする
Macサーバーのデータ復旧をする手順
Macサーバーのデータは以下の手順で復旧しましょう。
Time Machine機能とは
Time Machine機能によってデータの復元ができますが、復元にはHDDやUSBメモリといった外付けストレージが必要です。バックアップの「システム設定」の「Time Machine」から[オプション]をクリックすると、自動で1時間ごと・自動で1日ごと・自動で1週間ごと、または手動に変更可能です。
MacBook AirやMacBook Proでは、バッテリ駆動時に、Time Machineバックアップを実行するかどうかを選択できます。バックアップの必要性が低いデータは手動で保存対象から外せます。
Time Machineからデータ復旧する手順
Time Machineからデータ復旧する手順は以下のとおりです。
- 1.画面の上側にあるTime Machineメニューをクリックする(時計マークのアイコン)
- 2.「Time Machineに入る」をクリックする
- 3.復元したいファイルが保存されているフォルダを選択
- 4.復元したい日時を指定する
- 5.復元したいファイルを選択したら、「復元」ボタンをクリックする
Time Machineを設定する手順
Time Machine配下の手順で設定します。
- 1.Macに外付けストレージを接続する
- 2.「システム環境設定」から「Time Machine」をクリックする
- 3.設定画面を開いたら「バックアップディスクを選択」をクリックする
- 4.バックアップに使用する外付けストレージを選択する
サーバーのデータが消えたときに焦らないために
サーバーのデータが消えたときは、落ち着いて行動しましょう。
こまめにバックアップを取る
データは誤作動により消えることもあります。自力での対応を試みた結果、データが上書きされて取り返しがつかなくなる可能性も考えられるでしょう。こまめにバックアップを取り、データを復元できるようにしましょう。バックアップの方法には、「リムーバブルディスクバックアップ」「オンプレバックアップ」「クラウドバックアップ」などがあります。
クラウドサービスを利用する
オンラインストレージを活用する「クラウドバックアップ」を利用する方法も、あります。クラウドサービスなら、必要な書類やマニュアルをクラウドストレージにバックアップできます。
アクセス制限をする
データの重要度に応じてアクセス制限をかけておけば、不用意に重要なデータを消失するリスクを減らせます。また、内部不正、情報漏洩などのリスク低減も期待できるでしょう。
サーバーのデータ復旧をするときの注意点
サーバーのデータを復旧する際は、以下の点に注意しましょう。
復元ソフトでデータ復旧できるのは軽度な論理障害のみ
復元ソフトは、軽度の論理障害のみで対応可能なため、物理障害が原因の場合は使用できません。軽度の論理障害には、ファイルシステム障害(破損・損失)が当てはまります。
「論理障害」と「物理障害」の見分け方はあくまでも目安
論理障害だと思っていたのに、実は物理障害だったことは少なくありません。両者の症状は似ているため、一概に「この症例であれば、論理(物理)障害である」とは、いえないためです。
通電やオンオフを繰り返さない
電源のオンオフを何度も繰り返したり、通電を続けたりすると、破損箇所が拡大し、症状がさらに悪化する可能性があります。その結果、データの取り出しが不可能になることがあるため、注意しましょう。
サーバーのデータ復旧を依頼する会社の選び方
自力では復旧できないデータも、データ復旧会社に依頼することで復旧できることがあります。データ復旧会社の選び方を解説します。
復旧実績を確認する
「別会社が対応できなかった機器が当社でデータ復旧(復元)できた」実績は、技術力の証明になります。公式サイトで実績を載せている会社は多いため、どのような機種、どのような症状のトラブルを解決した実績があるのかを確認しましょう。大企業や警察・官公庁から依頼を受けているデータ復旧会社は、技術力や実績を兼ね備えていると考えられるため、選ぶ基準の1つになります。
ただし、「国内最高レベル」「技術力ナンバーワン」など、曖昧な言葉のみで具体的な復旧実績について公開していない会社には注意が必要です。また、データ復旧率は法律で定められた算出方法がなく、自己申告の数字のため、参考にはなりません。数値に根拠がない復旧率を目安にしないようにしましょう。
セキュリティ対策が万全か
自社のデータを預ける場合には、セキュリティ対策をしっかり行っているところを選びます。JIS規格の「プライバシーマーク」を取得しているか、セキュリティ対策の国際規格である「ISO27001」を取得しているか、「秘密保持契約書(NDA)」を書面で締結できるかを確認しましょう。
復旧ラボを構えているか
復旧ラボ・復旧センターを自社内に保有し、公開している会社は、自社内できちんと復旧作業を行っていることがわかるため、安心です。自社で復旧作業を行わず外注している、自社内に専用設備を持たない会社に依頼すると、誤った処置が行われ、大切なデータを失う可能性があります。データ復旧の実態を知るためには、直接ラボの様子を確認することが近道です。
成果報酬型であるか
データ復旧は機器の障害状況によって、復旧の難易度が大きく変わります。データ復旧成功の基準が明確になっている会社を選び、どういった場合に費用が発生するかを事前に把握しましょう。データが復旧できなかったにも関わらず、高額請求する会社もあります。データ復旧が成功した場合に費用を支払う「成功報酬制」でサービスを行っているデータ復旧会社を選ぶとよいでしょう。
まとめ
サーバーにアクセスできない原因は、論理障害や物理障害、サーバー障害などがあります。サーバーのデータは、ファイル履歴やシャドウコピーから復旧できる場合もあります。ただし、不具合が起きているにもかかわらず通電を続けたり、症状を早合点して間違った作業をしたりすると、大切なデータを失うことになりかねません。
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執筆者
菅原 一徳(Sugawara Kazunori)
■執筆者情報
・会社名:AOSデータ株式会社
・部署名:データ復旧事業部
・略歴:2015年に入社。弊社にて論理障害およびサーバー/NASなどのRAIDシステムにおける復旧技術を確立し、多くのデータ復旧案件を対応。論理障害の復旧実績8,000件、RAID機の復旧実績は2,000件を超える。※2024年8月時点
その後、デジタルフォレンジックエンジニアとして弁護士事務所や法執行機関等からの依頼でデータの証拠保全・不正調査、ランサムウェア感染機器の調査などを行う。
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