LTOとは、データ保存用のテープデバイスの1種です。汎用性・信頼性が高く、他規格の製品よりも人気があり、現在では代表的な規格とされています。この記事では、LTOとは何なのかやテープバックアップについて、メリット・デメリット、データ復旧などを解説します。LTOのデータを復旧したい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそもLTOとは?
LTOとはデータを保存するために用いる、テープデバイスの1つです。ここでは、LTOがどのようなデバイスなのか、これまでにどのような製品が作られてきたのかを解説します。
LTOとは
LTOとは「Linear Tape-Open(リニア・テープ・オープン)」の略です。データ保存用として使われるテープデバイスの1つです。テープデバイスは複数あるものの、汎用性の高さから世界中で頻繁に活用されているのが、LTO規格です。
LTOは、Hewlett Packard(HP)とSeagate Technology、IBMの3社によって共同開発されたテープデバイスであり、「Ultrium」が代表的な製品です。
LTOにおけるこれまでの世代
LTOは、2000年に第1世代(LTO1)が誕生して以降、続々と新しいバージョンが作られています。2024年時点で、最新世代は2017年に誕生した第8世代(LTO8)で、ロードマップ上は今後12世代(LTO12)まで作られる予定です。12世代のLTOは、大容量の192TBほどになるかもしれません
テープバックアップとは
テープバックアップとは、データをバックアップする手段の1つです。どのような仕組みでバックアップが行われるのか解説します
バックアップ方式の1種
テープバックアップとは、磁気テープストレージを使ったバックアップ方式のことです。磁気テープのカートリッジを使った装置を用いて、多くのデータを保存します。LTOとは、テープバックアップ方式を採用する際に使われる、標準的な規格です。ビデオテープ(VHS)を想像するとわかりやすいでしょう。
他のバックアップ方式との比較
バックアップ方式の1つである、テープバックアップはしばしば「D2T方式」と表記されます。バックアップ方式はD2T方式のほかに、「D2D方式」やD2T方式とD2D方式を組み合わせた「D2D2T方式」があります。それぞれのバックアップ方式は、以下の通りです。
- ・D2D方式:ディスク⇔ディスク
- ・D2D2T方式:ディスク⇔ディスク⇔テープ
D2T方式とD2D2T方式はいずれも、ディスクのみのバックアップと比べて、テープのメリットを活かしたバックアップ方式です。
テープバックアップのメリット
テープバックアップには、省エネや高いセキュリティ性など複数のメリットがあります。さまざまなメリットについて解説します。
1:省エネ
テープバックアップの場合、電力を消費するのは、データを読み書きするタイミングのみです。常時電力を消費することもないため、電気代が抑えられるでしょう。場合によっては、ディスクの1/10程度で済むケースもあります。
2:高いセキュリティ
テープバックアップは、バックアップが完了するとシステムと切断されるため、セキュリティ上、安心です。マルウェアやランサムウェアといったサイバー攻撃によって、過去データが破壊される心配も少ないでしょう。
3:大容量のデータ保存に対応できる
テープバックアップは、必要なデータをすべて保存できる容量があります。規格がバージョンアップするとともに、保存できる容量はさらに増加しています。最新のLTOであれば、12TB(圧縮時は30TB)の保存が可能です。
4:低コスト
テープバックアップを採用することで、総コストが低く抑えられます。米国の調査会社ESGによって実施された調査によると、10年間使用した場合を想定したところ、ディスクと比較して86%、クラウドと比較して66%ほどコストが抑えられたそうです。
5:データを長期間保存できる
テープバックアップであれば、データの長期保存も可能です。業種によっては、過去データを数年分保管しておくことが義務付けられています。特定のデータを10年以上保管しなければいけない業種もあるでしょう。磁気テープは50年以上もの間、データを保存できます。
6:遠隔地での保管に適している
データを保存したテープカートリッジは、単体で保存できます。データ保管用として、本社とは別の場所(遠隔地)に保管できます。災害や盗難に備えて、遠隔地でデータを保存できるため安全です。人為的なミスによって、データが消去されてしまうリスクも減らせるでしょう。
テープバックアップのデメリット
便利なテープバックアップですが、デメリットも存在します。ここではデメリットを解説します。
1:特定のデータ復元に時間がかかる
テープバックアップは、検索性が低い傾向にあります。特定のデータを復元するのに、時間がかかってしまうでしょう。保管したデータを速やかに検索できるHDDと比較すると、データを復元するために時間がかかる点は、テープバックアップを活用するデメリットです。
2:保守・管理コストが数値化しづらい
テープバックアップにかかる手作業や周辺機器のメンテナンスなど、数値化しづらいコストが発生します。IT業務の担当者が、日々の業務に追われている企業は要注意です。数値化して管理しづらいコストは、知らぬ間に日々の業務を圧迫する可能性があるためです。
テープバックアップの向き・不向き
テープバックアップの向き・不向きを知れば、より効率よく活用できます。向き・不向きのケースをそれぞれ解説します。
テープバックアップを活用するなら適材適所!
テープバックアップは、活用方法を工夫せずに手当たり次第にデータを保存してしまうと、効率的に活用できません。メリットとデメリットを考慮して、ベストな活用方法を選択すべきでしょう。例えば日常的に使うデータの保存先としては、テープバックアップは不向きです。復元に時間がかかるため、アーカイブしたデータを保存する場所としての活用をおすすめします。
テープバックアップに向いているケース
テープバックアップを活用するのに、向いているのは以下のようなケースです。
- ・企業の資産やコンプライアンスに関する記録
- ・分析や研究のデータ
- ・教育機関(美術館や図書館)のデータ
- ・医療関連のデータ
- ・データセンターのアーカイブ
- ・金融・保険に関するデータ
- ・監視業務で生じるデータ
- ・放送・メディア関連のアーカイブ
上記に分類されるデータは、テープを活用して保管するとよいでしょう。
テープバックアップに不向きなケース
以下に該当するケースの場合は、テープバックアップに不向きです。
- ・決してシステムを停止できないケース
- ・自動でバックアップしたいケース
- ・障害時の復元で、スピードが重視されるケース
- ・データの復元頻度が多いケース
上記のようなデータは、テープ以外に保管しておきましょう。
LTOで発生するデータ消失やトラブルとその原因例
LTOで発生し得るデータ消失やエラーや原因について解説します。
人為的なミス、誤操作によるデータ消失
LTOを交換する際は、人の手で行います。誤ったテープの挿入によって、データの上書き・消失が発生する恐れがあります。常に、ヒューマンエラーによるデータ消失のリスクがあると考えておきましょう。
物理的な故障
落下や衝撃によるLTOの破損のほか、テープが引っ張られたり曲がったりすることで物理的な障害が発生します。また、保管環境により、LTO内部にほこりや汚れが付着し、読み取りエラーや記録エラーを引き起こすこともあります。
物理障害が発生している場合、以下のような症状が見受けられます。
- 1.読み取り/書き込みエラー:LTOがデータを読み取ったり、書き込んだりできない状態
- 2.データアクセスの遅延:LTOからデータの読み取りや書き込みに異常に時間がかかる場合があります
- 3.物理的な損傷の跡:LTO自体の亀裂、変形、またはその他の損傷や、テープ自体に見られる折れやシワ
- 4.異音:LTOがデータを読み取る際や書き込む際に、通常とは異なる音がする
これらの故障や症状が発生している場合には、データ復旧業者に依頼することが望ましいと言えます。データ復旧サービスでは、壊れたLTOからデータを復旧し、LTOまたは外付けハードディスクにデータを移行することができます。
LTOを読み取る装置(ドライブ)が無く、データを読み出せないケース
過去にLTOを運用していたが、今は読み込むためのドライブを廃棄しており、保存されているデータの種類や、障害の発生状況が不明というケースです。
これらの問題が発生している場合には、データ復旧業者に依頼することが望ましいと言えます。データ復旧サービスでは、故障の診断から、データの抽出、必要であればWindowsやMacのパソコンでデータアクセスできるように外付けハードディスクにデータを移行することが可能です。
LTOデータ復旧に関連する2つのパラメーター
データの復旧にはRPOとRTOといった、2つのパラメーターが密接に関係しています。具体的にどのような関係があるのかを解説します。
RPO
RPOとは目標復旧時点のことで、復旧しなければならないデータの古さを示すものです。全てのデータを復旧できることが理想ですが、理想通りにはいきません。どの程度のデータ量であれば、失っても構わないかの線引きをしましょう。その基準となるのが秒〜日単位での時間を表したRPOです。
RTO
RTOとは、目標復旧時間のことです。障害が起こってから、通常業務へ戻るまでの時間であり、言い換えると、システムダウンを許容できる最大時間です。RTOによってデータ復旧へのアプローチ方法が変わります。LTOデータ復旧を迅速に進めるためには、RPOとRTO、両視点から作業計画を立てましょう。
データ復旧業者を選ぶポイント
自力での復旧は難易度が高く、リスクも大きいため、データ復旧業者に依頼することが望ましいでしょう。ここではデータ復旧業者選びのポイントを解説します。
復旧実績や復旧率
データ復旧において重要なのは、技術力です。技術力を確認する方法としては、復旧実績や復旧率があります。ただし、復旧率は業者によって算出方法が異なるため、注意しなければなりません。
自社内で復旧設備を有しているかも、技術力を確認するポイントです。
セキュリティ
復旧したいデータが重要機密情報の場合は、データ復旧業者のセキュリティ対策の確認が必要です。「ISO27001」や「プライバシーマーク(Pマーク)」などの規格を有しているかが、判断材料になります。
LTO以外の規格
LTO以外にも、テープバックアップの規格は複数あります。DLTやIBM Enterprise Tapeなどについて、1つずつ解説します。
DLT
DLTとは「Digital Linear Tape(デジタル・リニア・テープ)」の略です。1984年に開発されたもので、当初は業界の標準規格の1つでした。現在では、保存容量や使いやすさなどのさまざまな要因から、LTOが主流となっています。
IBM Enterprise Tape
IBM Enterprise Tapeは、LTOと同じ技術をベースにしつつ、独自に進化したものです。2018年に開発された3592ファミリのTS1160が、最新規格とされています。速度向上に合わせ、エラーや誤りに対応できる訂正機能が、より高度になっている点が特徴です。
DDS/DAT
DDSとは「Digital Data Storage(デジタル・データ・ストレージ)」の略であり、音楽のデジタル録音用であったDATがベースとされています。DDSは記録装置を指し、その中での記録媒体がDATです。SONYとHPの共同開発によって誕生しました。
AIT
AITとは「Advanced Intelligent Tape(アドバンスド・インテリジェント・テープ)」の略であり、1996年にSONYから販売された規格です。DLTと同様に、業界の標準規格の1つでしたが、現在ではLTOが主流となりました。ヘッドやテープへの負担が大きいことが、主流ではなくなった原因の1つです。
QIC
QICとは「Quarter-Inch Cartridge(クオーターインチ・カートリッジ)」の略であり、1972年に3M社が開発した規格です。日本ではあまり普及していないものの、海外では多くの規格が販売されています。
テープバックアップの活用事例
テープバックアップを活用した事例として、Gmailの機能障害が挙げられます。Gmailはセンターのデータを保存する方法として、テープバックアップを採用しています。機能障害が起きた際も、4万人のユーザーのデータを復元できました。Gmailでは現在でも、データ保護の方法として、精度の高い復旧を目指すためにはテープ利用が欠かせないと考えられています。
テープの歴史とは
テープの原型は、19世紀まで遡ります。ここでは、誕生から現在に至るまでのテープの歴史について解説します。
始まりは19世紀から
テープの原型は、19世紀末に誕生し、その実用化は第二次世界大戦中のドイツで始まりました。1950~1970年代には、コンピューター用テープストレージが登場し、1980年代には、ロボットを使ってテープを自動でセットする技術が誕生しました。
1990年代には、データ管理にコンピューターを使うことが一般的になり、テープの大容量化が進みました。2000~2010年代には、DLTやAITが標準規格となり、その後LTOが台頭しています。
テープ離れの背景は?
現在、テープ離れという現象が生じている理由には、以下のことが考えられます。
- ・二次保管場所として、クラウドという選択肢が誕生した
- ・HDD自体の価格が低下し、テープと比べて安価になった
- ・仮想化技術が進化した
上記の理由から、テープ離れが進んでいる現在ですが、現在もデータをテープで保管している企業は多くあります。
テープバックアップの今後は?
テープの保存容量は、テープ磁性体の面記録密度に比例します。現行世代のテープには、バリウム・フェライトが採用されています。最新技術では、ストロンチウムフェライト磁性体を活用するといった実走行試験が進められ、すでに成功を収めています。テープの大幅な容量アップが期待できるでしょう。
まとめ
LTOはテープデバイスの1つです。世界中で採用されている規格であり、現在はテープデバイスといえばほぼLTOと考えても、差し支えないでしょう。LTOには多くのメリットがある反面、デメリットもあります。保存に向いているデータもあれば不向きなデータもあるため、適材適所が重要です。
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執筆者
小菅 大樹(Kosuga Daiki)
■執筆者情報
・会社名:AOSデータ株式会社
・部署名:データ復旧事業部
・略歴:2015年に入社。物理障害復旧部門の立ち上げを行い、HDD・SSD・Flash Mediaの内製化を行った。自身でも1万台以上の物理障害の復旧を成功させている。
・保有特許:特開2017-188178(https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6450702)
・過去の講演:車載組込みシステムフォーラム(ASIF)様にて、「ストレージの物理障害対応と車載機器へのデジタルフォレンジックの活用例」をテーマに講演。(https://www.as-if.jp/skillup-seminar-2021-3.html)
・所属団体:NPO データ復旧技術研究会
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